タイムが出ない理由を把握して、安全に効率的よくタイムアップを狙え!
サーキット走行を楽しんでいると、やっぱり「もっと速く走りたい!」って思っちゃいますよね。
ところが、走行を終えてタイムの記録用紙をもらってみると、うまく走れたと思っていたのにタイムはほとんど変わらない。「何がダメだったんだろう…?」と頭をポリポリしながらセクタータイムを見てみても、カンマ数秒の違いばかりでさっぱり違いが分からない。
同乗走行をお願いして助手席に乗っていると、たしかに操作がスムーズなのは分かるけど、「こんな感じです!( `д´)b」と言われても、なんで速いのかはやっぱり分からない。
いまひとつ分からないまま、気付くと毎月レブスピードを買っていて、「よし、次はスローイン・ファストアウトを心がけて、V字ラインで立ち上がり重視にしてみよう」とか考えるんだけど、次回いざ走ってみると「これで合ってるのかな…?」と結局分からない(笑)
あなたにも、こんな経験あるんじゃないでしょうか。
僕はずっとこんな感じでしたよ(笑)
ラップタイムだけで走りを改善するのは超危険!
ラップタイムを見ることで、相対的に上手く走れたかどうかは分かりますが、その原因は分かりません。
ラップタイムなんてその程度のものなのに、毎回1000円出してポンダーを借りたり、何万円も出してP-LAPを買ったりするのはバカらしいです。今やロガーは1万円で買えますからね。
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ラップタイムを眺めて、「ベストラップより1秒も遅かったから、次はブレーキをもっと詰めよう」とは思いませんよね?
たとえば、1周4.3kmの富士スピードウェイを30分かけて10周して、ベストラップが3周目で、セカンドベストが5周目、タイム差は1秒だったとしましょう。
考えてみれば当たり前なんですけど、10周走り終えた後、3周目と5周目にどんな走り方をしていたかなんて、覚えてるわけがないですよね(笑) 車載動画を録画していたとしても、その場でデジカメを操作して動画を見返すのは面倒で、そこまでしている人はなかなか見かけません。
セクタータイムを見たところで、1つのセクターに複数のコーナーがあるわけです。たとえば富士のセクター2で1秒違っていたとしても、100R・ヘアピン・ダンロップがそれぞれ0.3秒遅かったのか、そのラップだけ100Rは0.5秒速かったけどダンロップで1.5秒ロスしているのか、分からないわけです。
出典:http://blog.livedoor.jp/markzu/archives/51395225.html
10周走った内のラスト2周ぐらいなら、どんな状況でどんな操作をしていたか覚えているかもしれませんけど、そうでもなければ改善するべきポイントが分かりません。このため、本当に改善するべきはダンロップコーナーなのに、ヘアピンをもっと速く走ろうと頑張っちゃう、という勘違いだって起きます。
最悪の場合、そこで無理しすぎてクラッシュ…なんてことだってあり得るわけです。
データロガーあるのに、ラップタイム見るだけじゃもったいない!
もしかすると、あなたもデータロガーをお使いかもしれません。
でも、僕がこれまでお会いしてきた方のほとんどは、細かいデータの見方がよく分からず、ただのラップタイム比較表になってしまっていました。これでは、データロガーを活用できているとは言えず、宝の持ち腐れです。
思えば、僕がデータロガーを使うようになったのが今から6年前の話です。
今でこそデジスパイスが有名になりましたけど、僕はデジスパが登場するよりも前から、1万円で市販されていたGPSロガー+フリーソフトの組み合わせで走りを解析していました。
そこで、今さらですがデータの見方を詳しく解説してみることにしました。少しでも多くの方がロガーの有効性に気が付いて、安全に・楽しくスポーツ走行を楽しんでいただければと思います。
実践!LAP+を用いたデータロガー解析入門
では、データロガーを使うことで、改善ポイントがどのように分かるかをお見せしましょう。
実際に、僕が富士スピードウェイを走ったときのデータを用いて説明します。これはもう2年以上前の走行データで、当時どんな走りをしていたかは、もはや覚えていません(笑)
この先、1,600文字(原稿用紙4枚分w)に渡って解説しますので、眠くなってしまう方やオーバーヒートしてしまう方は、こちらへどうぞ(笑)→記事後半に進みます
※この先の画像はクリックすると拡大できるので、見にくければ拡大してみてください。
画面の見方
これがデータロガーの解析ソフト「LAP+(ラプラス)」の無料版にデータを取り込み、グラフの大きさや位置を調整したものです。たまに雑誌でも見かるような図ですよね。(4~5回使って慣れれば、LAP+を起動してここまで1分でできます。)
画面の左半分がコース図、右半分がグラフ、下の端っこにラップタイム・セクタータイムが出ています。
コース図は富士スピードウェイのホームストレート~1コーナー~Aコーナーが表示されていて、Aコーナーを抜けた先がセクター1の終点になっています。
グラフは3つ表示しており、上から順に速度・縦G(プラスが加速、マイナスが減速)・横G(プラスが左コーナー、マイナスが右コーナー)となっています。
FSWの1コーナー~Aコーナーでの0.8秒の違いを検証
では、①-1(画像左下)と①-2(画像右上)をご覧ください。
これがセクター1(コントロールライン~Aコーナー先)のセクタータイムを表しており、青線のラップが42.948秒、赤線のラップが42.163秒で走行したことが分かります。つまり、赤線の方がセクター1は約0.8秒速かった、ということです。
この理由を、データから探り出していきます。
速度の違いからブレーキングを検証
②をご覧ください(グラフ上部の「速度」の右下)。
速度のグラフが右下がりになっている=減速していることを示しています。これは、1コーナーに向けてブレーキングしているところです。
赤線の方が緩やかにスピードが落ちていますよね?つまり、赤線の方がブレーキングが弱いと考えられます。今は、ここまで分かれば大丈夫です。
これはスピード、つまり加速・減速に関することなので、次は縦Gのグラフを見てみます。
縦Gからヒール&トーの精度が読み取れる
③をご覧ください(グラフ中段の「縦G」の直下)
赤線のグラフが上がったり下がったりしていますよね?
縦Gのグラフが上下しているということは、赤線の減速力が強まったり弱まったりしている、つまりブレーキの踏力が不安定ということです。青線はほぼ真横に伸びているので、一定の減速G=ブレーキの力が一定ということです。
この時の速度のグラフをよく見ると、青線は一直線に右肩下がりですが、赤線は微妙~に波打っていることからも分かります。
ブレーキング中に踏力が不安定になる理由はご存知ですよね?
そう、ヒール&トーがヘタクソなのです(笑)
アクセルを煽るときにブレーキを踏む力が抜けてしまった結果、ブレーキが弱まり、減速も緩やかになった、ということが分かります。
ところが…、1を思い出すと、赤の方がタイムは0.8秒速かったんです。
ブレーキングは失敗しているのにタイムは上回っているということは、その先でロスした分を取り戻しているということです。
縦Gから立ち上がり重視のコーナリングが上手くいったか分かる
というわけで、④-1(速度グラフ中央)をご覧ください。
赤線の方が早い段階からスピードが出ています。そして、その先Aコーナー手前で減速するまで、ずっと青線より速いスピードが出ています。ここでタイムを取り戻しているんですね。
その原因は、④-2(「縦G」の右下)を見ると分かります。
④-2の矢印の先を見ると、青線は凹んでいるのに対し、赤線は左下から右上に向けて一直線に伸びていますよね?つまり、赤線はヒール&トーはヘタクソでしたけど、その後はすぐに加速体勢に入ったということです。
一方の青線は縦Gがプラスになる=加速体勢に入ったのに、一瞬だけ縦Gが0に戻って、そこからまた加速している。つまり、一度アクセルを戻しているんです。その結果、立ち上がりで出遅れてスピードに乗ることができず、ブレーキングで稼いだ分をロスしてしまいました。
そして、この理由も説明できます。
横Gからブレーキングポイント・切り遅れが読める
⑤をご覧ください(横Gグラフ)
青線の方が後からグラフが下向きになってますよね?これは横Gがかかり始めるのが遅かった=曲がり始めるのが遅かったということです。
ここでブレーキングを思い出してみると、赤線はヒール&トーに失敗していましたが、青線は強いブレーキをうまくかけていました。
しっかりと止められていたのに、ターンインが遅いというのはどういうことか?
それは、ブレーキングが早すぎて、コーナーの手前で減速しすぎちゃったということです。なのでコーナーに向けてちょっとだけ再加速して、クリッピングポイントで再びアクセルを抜いて旋回しているんですね。
これが、4-2で見られたアクセル戻しの理由です。
データからコーナリングの様子を丸裸にできる!
続いて、⑥-1を見て下さい。
赤線は横Gが発生してから最大値(-1.1G)を迎えると、そこを頂点にすぐグラフは右上に伸び始めています。しかも、そこから真上に線を引いていくと、スピードも一番落ちきったところで横Gが最大になっています。
その右側⑥-2の青線はというと、横Gのグラフが真横に約3秒間伸びていて、そこから右上に伸びていきます。
⑤と⑥を総合すると、赤線はブレーキング(ヘタでしたけど)でスピードが落ちきったところでハンドルを切り込めていて、結果としてターンインでしっかり向きを変えることができ、クリップをすぎたらすぐにハンドルを戻し始めている。つまり、理想的なV字型のコーナリングができたということが分かります。
一方の青線は手前で止めすぎてしまって再加速した結果、前荷重が抜けてしまい、スパッと向きを変えることができず、加速体勢に入るのが遅れた、ということになります。
データから分かったこと
データ解説の1~6を総合すると、こういうことになります。
セクター1で青線が赤線より0.8秒遅かった理由
- ブレーキング開始が早すぎて、クリッピングポイントの手前で減速が終わってしまい、再加速した
- その結果、前荷重が抜けてしまい、ターンインで素早く向きを変えられなかった
- 向きが変わらないのでアクセル全開にするのが遅れ、立ち上がり加速も遅くなり、その先のスピードが伸びなかった
今後の改善ポイントと練習法
もっとブレーキを詰めることができる。
ただし、ブレーキングを遅らせるとヒール&トーに失敗したときにコースアウトするリスクがある。(現に、赤線のラップでは失敗している)
なので、まずはヒール&トーを安定して上手くできるように練習し、それができるようになったらブレーキングポイントを奥にしていくのが安全といえる。
→これを、動画を見なくても、たとえ本人でなくても、データさえ見れば分かるのがデータロガーの凄さです!
あらゆる検証に使うことができる
今回はコーナリングのタイム差を検証してみましたが、他にも「シフトアップするかしないか、どっちが速いのか?」を検証してみたり、チューニングやタイヤ交換前後の比較、イベントでプロに運転してもらった時のデータと比較など、多彩な使い方をすることができます。
また、操作に慣れれば、ノートパソコンを持参して現地で解析することもできます。僕も一時期やっていましたが、今回の解析ぐらいなら15分ぐらいでできますから、改善点をその場で見つけて、次の走行枠で修正する…なんていう、F1ドライバーのテストみたいなことを自分ですることだってできちゃいます!
さらにさらに!車載動画もかっこよくできる
これはデータロガーそのものの機能ではありませんが、無料の動画編集ソフト「Aviutl」と、無料プラグインの「VSD for GPS」を用いると、LAP+のデータと車載動画を組み合わせ、コース図やラップタイム、スピードを合成した動画も作ることができるんです!
※ちなみに、このラップがデータ解析に用いた青線のラップです。1コーナーの止まりすぎ感をご覧ください(笑)
データロガーのデメリット
そんなデータロガーのデメリット…もうお分かりですよね。
身にしみて分かった方もいらっしゃるかもしれませんが、「たとえデータを見ることができても、こんな解析できないよ!!」と感じる人もいる、ということです(笑)
かみ砕いて、ひとつひとつ考えればそれほど難しくはないのですが、感じ方は人それぞれですよね。
よろしければ、あらためて解説をお読みいただき「全然分からん!」・「もうちょっと教えて欲しい」・「素晴しい!」など(笑)、コメント欄でご意見いただけますと大変嬉しいです^^;
まとめ:客観的にピンポイントで改善点を把握して、安全で効率的なタイムアップを!
このように、速度・縦G・横Gの読み取り方を理解できると、走行中に何が起きていたのかは8割方理解できるようになります。
しっかり見ていくとオーバーステアもグラフから読み取れるので、その前の部分を調べればなぜオーバーにつながって、それがどんな操作に起因することなのかも分かるようになります。
ラップタイムからは絶対に分からないことですし、動画で見るにしても、別のラップの動画を並べて見比べでもしないと、なかなか違いに気付くことは難しいでしょう。
10回ポンダーを借りれば1万円、P-LAP買ったら3万円。
ラップタイムと車載動画を頼りに、自己流で間違った練習をしてクルマ壊したらウン十万。
だったら、はるかに多くの情報を読み取れるデータロガーに1万円出した方がお得じゃありませんか?
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コメント
カートのログをとるのに、LAP+かデジスパイスかで悩んでいるのですが、それぞれの違いだったり評価ってご存じですか? 老舗なのはデジスパイスですが、+3万円分がどう効くのか気になっています。
KUMAさん、こんにちは。
僕はデジスパイスを使ったことはないですが、機能面で見ればデジスパにできることはほぼLAP+でできますよ。
LAP+はパッケージ製品として販売されていないので、説明書みたいなものが欲しい方にはネットでしか調べられないことが不安かもしれませんが、それさえ乗り越えられれば圧倒的に安価なLAP+を僕はオススメします。